老後に持ち家がない場合の生活プランを考えよう

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遺品整理士 谷 智栄
建設業で培った10年以上の経験を活かし、現在は遺品整理のプロフェッショナルとして活動。遺品整理で社会と向き合った経験を踏まえて情報サイトの運営をスタート。専属のファイナンシャルプランナーと話し合いを通して将来の自分と重ねながら実情の理解を深めています。遺品整理・生前整理・相続の相談・土地活用の相談・施工までトータルサポートします。まずは【あなたと遺品整理】とLINEともだちになってお悩みをメッセージしてみませんか?

2021年の内閣府の調査によると、65歳以上の高齢者のうち、約2割が賃貸住宅での生活を送っています。この数字は都市部ではさらに高く、名古屋市内では3割を超えるエリアも存在します。

さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年までに65歳以上の単身世帯は約896万世帯まで増加すると予測されています。このうち、賃貸住宅居住者の割合も増加傾向にあり、今後ますます高齢者の住まいの確保が社会的課題となることが予想されます。

老後に持ち家がないことの現状と課題

老後の生活で最も大切なのは、安定した住まいの確保です。年を重ねるにつれて体の機能が低下してくるため、医療機関や買い物施設へのアクセス、地域コミュニティとの関わりなど、将来を見据えた生活基盤の整備が不可欠となります。

とくに、高齢期における住まいの選択は、その後の生活の質を大きく左右する重要な決定となります。医療・介護サービスへのアクセスのしやすさ、日常的な買い物の利便性、地域コミュニティとの関係づくりなど、多様な視点からの検討が必要です。

単身高齢者世帯が増加傾向にあり、2040年には全世帯の4割を占めると予測されています。この状況を踏まえ、高齢者向け住宅の整備や支援制度の拡充が進められていますが、都市部における住宅確保は深刻な課題となっています。

持ち家を持たない生活には、住み替えの自由度が高く、固定資産税や大規模修繕費用などの負担がないというメリットがあります。一方で、家賃の支払いが継続的に必要となり、年金生活では経済的な負担が大きくなる可能性があります。

また、賃貸契約の更新や大家さんの意向により、突然の転居を強いられるリスクも存在します。さらに、住環境の改善や設備の更新に制限があることから、加齢に伴う身体機能の変化に対応しづらいというデメリットもあります。

現在の日本では、高齢者向けの賃貸住宅の供給は増加傾向にあるものの、需要には追いついていません。バリアフリー設計や見守りサービスなど、高齢者に配慮した設備を備えた物件は限られています。

また、入居時の保証人確保や家賃支払いの保証といった高齢者特有の課題も存在します。都市部では家賃の高騰により、年金収入だけでは適切な住環境を確保することが困難な状況となっています。このような背景から、持ち家を持たない高齢者が安心して暮らせる住まいの確保は、社会全体で取り組むべき重要な課題となっています。

賃貸住宅での老後生活

賃貸住宅を選択する際は、長期的な視点での費用対効果を考慮することが重要です。初期費用は持ち家購入と比べて低額ですが、毎月の固定費として家賃が発生することを念頭に置く必要があります。

賃貸住宅で暮らす場合、家賃だけでなく、共益費、駐車場代、保証料などの費用もかかります。これらの支出を事前にしっかり把握しておきましょう。標準的な1LDKの賃貸物件では、都市部で月額7万円から10万円程度、地方都市では5万円から7万円程度の家賃設定が一般的です。

老後の安定した生活のためには、年金収入と貯蓄を組み合わせた長期的な資金計画が不可欠で、家賃支払いに加えて、医療費や生活費などを考慮した総合的な資金管理が求められます。

サービス付き高齢者向け住宅の費用の目安

  • 入居一時金:0~50万円
  • 月額費用:12~25万円(家賃、共益費、生活支援サービス費を含む)
  • 食事代:4~6万円(3食込み)

また、高齢者向け賃貸住宅には、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホーム、シニア向け分譲マンションなど、様々な選択肢があります。

これらの施設では、24時間の見守りサービスや、食事の提供、介護サービスとの連携など、高齢者に配慮したサービスが用意されています。ただし、一般の賃貸住宅と比べて費用が高額になることが多いため、自身の経済状況を考慮した選択が必要です。

高齢者が賃貸物件に住む際には、保証人探しや家賃保証会社との契約、予期せぬ家賃値上げ、建物の老朽化など、さまざまな問題が出てくることがあります。こうした問題には、高齢者向け住宅を扱う不動産会社を利用したり、行政の支援制度や家賃保証制度を活用したりするなど、いくつかの方法を組み合わせて対応していくとよいでしょう。

また、地域包括支援センターなどの相談窓口を積極的に活用することで、問題の早期発見と対応が可能になります。

高齢者向けの住居選びでは、バリアフリー設計や手すりの設置など、身体機能の低下に配慮した設備が整っていることが重要です。また、医療機関や商業施設への近接性、公共交通機関へのアクセス、緊急時の対応体制なども重要な選択基準となります。

さらに、地域コミュニティの活動状況や、見守りサービスの有無なども、安心して暮らすための重要な要素として考慮する必要があります。

賃貸契約時には、契約期間や更新条件、退去時の原状回復義務の範囲、家賃の支払方法など、細かな条件を十分に確認することが重要です。とくに、高齢者の場合は、緊急連絡先の設定や、介護サービスの利用可能性、住宅設備の改修の可否なども事前に確認しておく必要があります。また、保証会社との契約内容や、家賃支払いの保証範囲についても詳細を把握しておくことが望ましいです。

安心して暮らせる賃貸物件の条件として、耐震性能や防災設備が整っていることはもちろん、24時間対応可能な管理体制や、緊急通報システムの設置なども重要な要素となります。また、エレベーターの設置や段差の少ない設計、十分な採光と通風、防犯設備の充実など、高齢者の生活に配慮した設備が整っていることも必要です。さらに、地域の医療・介護サービスとの連携体制が整っていることも、長期的な居住を考える上で重要な条件となります。

高齢者に適した賃貸住宅の選び方

高齢期の生活では、日常生活の利便性がとくに重要となることから、住宅選びにおいて立地条件は最優先事項として考える必要があります。具体的には、徒歩圏内に総合病院や診療所があることはもちろん、食料品や日用品を扱うスーパーマーケット、ドラッグストアなどの商業施設が充実していることが望ましいです。

また、公共交通機関へのアクセスも重要で、バス停や駅までの距離、路線の本数、終電・終バスの時間なども考慮に入れる必要があります。さらに、坂道や階段の少ない平坦な地形であることも、将来の移動の負担を考えると重要な選択基準となります。

物件内覧時の重要チェックポイント

  • 玄関前のスペース(車椅子の回転可能な広さ:最低1.5m×1.5m)
  • 廊下幅(車椅子対応には80cm以上必要)
  • 浴室の広さ(介助スペースとして1坪以上が望ましい)
  • 緊急通報装置の設置場所(浴室、トイレ、寝室など)
  • 災害時の避難計画の有無
  • 停電時のバックアップ電源の確保
  • 宅配ボックスの設置状況
  • 防犯カメラの設置位置と数
  • インターネット環境の整備状況

また、契約前に確認すべき重要事項として

  • 契約更新料の有無と金額
  • 共益費に含まれるサービスの詳細
  • 24時間対応の管理体制の有無
  • 居室内での設備改修の可否
  • 近隣騒音の状況

これらの要素も、安全で快適な生活を送るための重要な判断材料となっています。

賃貸住宅の設備と間取りは、高齢期の生活の質を大きく左右する要素となります。玄関やトイレ、浴室には手すりが設置されているか、バリアフリー設計になっているか、段差は最小限に抑えられているかなどを細かくチェックする必要があります。

また、エレベーターの設置は必須条件で、特に2階以上の物件を検討する場合は重要です。間取りについては、寝室とトイレの距離が近いことや、キッチンでの作業がしやすい広さがあることなども重要なポイントとなります。さらに、室内の採光や通風、収納スペースの配置なども、長期的な生活を見据えて慎重に確認することが大切です。

持病や障害がある場合、あるいは将来的な介護サービスの利用を見据えている場合は、それらに対応できる住環境であるかどうかの確認が必要です。具体的には、介護ベッドや車椅子が入る広さの確保、介護スタッフの訪問に対応できる玄関周りのスペース、緊急通報システムの設置可否などを確認します。

また、大家さんや管理会社との間で、必要に応じた住宅改修の可能性について事前に相談しておくことも重要です。さらに、近隣に介護サービス事業所や地域包括支援センターがあるか、24時間対応の在宅医療サービスを利用できるかなども、重要な確認事項となります。

老後の資金計画と経済的安心

老後の資金計画を立てる際は、年齢や健康状態によって必要な費用が変動することを考慮する必要があります。例えば、65-74歳の前期高齢者と比べて、75歳以上の後期高齢者では、医療費や介護費用が1.5~2倍程度増加する傾向にあります。

また、加齢に伴い外出の機会が減少することで、交通費は減少する一方、宅配サービスの利用増加などで新たな支出が発生する可能性もあります。

利用可能な主な支援制度

  • 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅(家賃補助制度あり)
  • 高齢者住宅財団による家賃債務保証制度
  • 自治体独自の高齢者向け住宅補助制度

老後の賃貸生活における必要経費は、家賃を中心に慎重な試算が必要です。標準的な一人暮らしの場合、家賃(5~8万円)、光熱費(1.5万円)、食費(3~4万円)、医療・介護費用(2~3万円)、交通・通信費(2万円)、その他日用品費(2万円)など、月額15~20万円程度の生活費を想定する必要があります。

標準的な試算例として、名古屋市内での場合

  • 家賃(1LDK):7-11万円
  • 光熱費:1.5-2万円
  • 食費:4-5万円
  • 医療・介護費用:2-3万円
  • 交通・通信費:2-3万円
  • その他日用品費:2-3万円

また、以下のような予備費も考慮が必要です

  • 突発的な医療費:年間30-50万円
  • 家電製品の買い替え:年間10-20万円
  • 冠婚葬祭費:年間10-20万円
  • 趣味・娯楽費:月額1-2万円

合計で月額11.5-27万円程度が必要となります。地方都市の場合は、特に家賃が3-4割程度低く抑えられる傾向にあります。これに加えて、突発的な医療費や介護費用、家財の買い替えなど予期せぬ支出にも備えて、年間で50~100万円程度の予備費を確保しておくことが望ましいでしょう。

また、物価上昇や将来的な家賃値上げなども考慮に入れ、余裕を持った資金計画を立てることが重要です。

老後の収入の柱となるのは、国民年金や厚生年金です。平均的な年金受給額は月額15~20万円程度ですが、これだけでは賃貸生活の維持が難しい場合も多いため、退職金や個人年金、資産運用収入などを組み合わせた収入構造を検討する必要があります。

とくに、定期預金や国債などの安全性の高い運用商品を中心に、インフレに対応できる程度の利回りを確保しつつ、元本の安全性を重視した資産運用戦略が重要です。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、つみたてNISAなどの税制優遇制度を活用することで、より効率的な資産形成が可能となります。

経済的な安心感を得るためには、複数の収入源を確保することが重要です。例えば、シルバー人材センターを通じた軽作業やパートタイム就労、趣味や特技を活かした副業など、体力や健康状態に応じた収入確保の方法を検討することが有効です。

また、生命保険や医療保険、介護保険などの民間保険を活用して、将来的なリスクに備えることも重要です。さらに、日々の支出を細かく管理し、無駄な出費を抑えることで、限られた収入を効率的に活用する習慣を身につけることが大切です。

加えて、行政の提供する高齢者向けの各種支援制度や補助金制度を積極的に活用することで、経済的な負担を軽減することも可能です。

親族やコミュニティとの関わり

最近では、LINEやZoomなどのビデオ通話アプリを活用した遠隔での見守りや交流が一般的になってきています。週1回の定期的なオンライン面会を設定するなど、テクノロジーを活用した新しいコミュニケーション方法を取り入れることで、離れて暮らす家族との絆を維持することができます。

最近では、AI搭載の見守りカメラやセンサーを活用したサービスも増えており、異常の早期発見や緊急時の迅速な対応が可能になっています。また、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを活用した健康管理も一般的になってきています。

また、ICTを活用した見守りサービスも充実してきています。例えば、電気やガス、水道の使用状況をモニタリングする生活リズムセンサーや、スマートスピーカーを活用した定期的な声かけサービス、GPS機能付きの携帯端末による位置情報の共有など、テクノロジーを活用した新しい見守りの形が広がっています。これらのサービスを家族による見守りと組み合わせることで、より安心な生活環境を構築することができます。

最近では以下のようなデジタルサービスも普及しています

  • オンライン診療システムの活用
  • スマートスピーカーによる生活支援
  • 食事宅配サービスのアプリ予約
  • オンラインショッピングの活用方法
  • デジタル決済システムの利用

賃貸で暮らす高齢者が安心して生活するには、親族との良好な関係が欠かせません。親族に援助や支援を求める際は、具体的な内容や期間を明確にし、双方の負担とならない範囲で協力を依頼することが大切です。

とくに、緊急連絡先や保証人としての役割、定期的な見守りや日常生活のサポートなど、できることとできないことを予め話し合い、明確にしておくことが重要です。また、経済的な支援を受ける場合は、書面での取り決めを行うなど、後々のトラブルを防ぐための配慮も必要です。

家族との関係を見直し、新しい生活スタイルを構築することは、高齢期の生活の質を大きく左右します。子どもや孫との同居や近居の可能性を検討する際は、お互いのプライバシーや生活リズム、経済的負担の分担など、具体的な生活ルールを設定することが重要です。

また、定期的な連絡や訪問の頻度、家事や買い物の分担など、日常生活における役割分担を明確にすることで、持続可能な支援体制を築くことができます。さらに、家族との時間を大切にしながらも、過度な依存を避け、自立した生活を維持することが、良好な家族関係を続けるコツとなります。

高齢期の単身生活では、地域コミュニティとの繋がりが孤独死予防の重要な鍵となります。自治会や町内会への参加、老人クラブやサークル活動への参加など、積極的に地域活動に関わることで、見守りの輪を広げることができます。

また、民生委員や地域包括支援センター、近隣の商店など、日常的に接点のある人々との関係づくりも大切です。さらに、スマートフォンやタブレットを使った見守りサービスや、定期的な安否確認サービスなども利用できます。

こうした支援を組み合わせることで、より安心な生活環境を作ることができます。日頃から近所の方々と交流を持ち、困ったときに気軽に相談し合える関係を作っておくことで、より安心した暮らしが実現できます。

持ち家なしでの老後のライフスタイル

持ち家を持たない老後の一人暮らしには、自分のペースで生活できる自由さと、生活スタイルの柔軟な変更できるという大きなメリットがあります。例えば、健康状態や経済状況に応じて住まいを変更できる点や、広すぎる家の管理や庭の手入れなどの負担から解放されることで、より自分らしい生活に時間を使えるようになります。

その一方で、緊急時の対応の遅れや体調不良時のサポート不足、また突然の住居費の上昇への対応など、一人暮らしならではのリスクも存在します。これらのリスクに対しては、ICT機器を活用した見守りシステムの導入や、緊急通報サービスの利用、近隣住民との関係構築など、複数の対策を組み合わせることが重要です。

また、定期的な健康診断や、かかりつけ医との良好な関係維持など、予防的な対策も欠かせません。

持ち家にとらわれない老後生活では、これまでの趣味を深めたり新しい活動に挑戦したりする時間的余裕が生まれます。地域のカルチャーセンターや公民館での講座参加、スポーツジムでの健康維持活動、図書館での読書会への参加など、地域資源を活用した様々な活動に参加することで、生活に彩りを添えることができます。

また、シルバー人材センターでの就業や、ボランティア活動への参加など、社会との関わりを持ち続けることで、生きがいを見出すことも可能です。さらに、オンラインコミュニティへの参加や、SNSを通じた同世代との交流など、デジタル技術を活用した新しい形での社会参加も、生活を豊かにする選択肢となっています。

遺品整理士 谷

活動的な生活を送ることは、心身の健康維持にもつながり、医療費や介護費用の抑制にも寄与する可能性があります。趣味や活動を通じて得られる交流は、孤独感の解消にも効果的で、充実した老後生活を送るための重要な要素となっています。

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