日本のスマートフォン普及率は90%以上になり、80歳以上の方でも6割をこえる人が日常生活でスマホを使用している。使い方は多様だと思うが、その中でもSNSの利用者が大半をしめており、メッセージ連絡手段としてアジアで広く知られているLINEは日本で90%以上のシェアをほこります。
普及率がものがたるように、日本人のほぼ全員がスマホとSNSを使用している現在では、親の突然死でIDとパスワードがわからないから月額契約が解約できずに、毎月数千円ほどの無駄な出費が続いているご自宅が多いです。
SNSの中には写真や動画などの思い出がたくさんつまっているので、データを取り出していつでも見返せるようにしたくても、そもそもロック画面を解除できないこともあります。
ネット銀行も印鑑なしのオンラインで始められるので、預金が動かせずに困ることもあります。家族の負担を取り除くためにも、生前にデジタル終活を行う事が求められています。
デジタル終活に必要なデータを把握する
デジタル終活の重要事項であるIDとパスワードを残すには、まずはデジタル終活に必要なデータをすべて把握してから作業をおこないます。基本的なデータの種類リストを見ながら、何が当てはまるのかリストアップしましょう。
個人情報
個人の基本情報や身元確認に必要なデータ。
基本情報
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードのスキャン)
- 戸籍謄本や住民票のコピー
医療情報
- 健康保険証のコピー
- 主治医やかかりつけ病院の連絡先
- 持病やアレルギー情報
- 予防接種履歴や診断書
葬儀に関する情報
- 希望する葬儀の形式や場所
- 遺影用の写真データ
- 遺言書のデジタルコピー(法的効力は原本に依存)
財産情報
資産や負債に関連するデータ。
金融情報
- 銀行口座番号と取引履歴(エクセルまたはPDF)
- 投資口座(証券、FX、暗号資産)の情報
- クレジットカード明細やローン契約書
- 金庫の場所や鍵情報
不動産情報
- 土地や建物の登記簿謄本
- 賃貸契約書や管理会社の連絡先
- 固定資産税の支払い記録
その他の財産
- 貴金属、コレクションの一覧や写真
- 生命保険や年金の契約情報
デジタル資産
オンラインで管理している財産やアカウント。
オンラインアカウント情報
- メールアカウント(Gmail、Yahoo! Mailなど)のログイン情報
- SNSアカウント(Facebook、Twitter、Instagramなど)のログイン情報
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)内の重要データ
デジタル財産
- 暗号資産のウォレット情報と鍵
- オンラインショップの購入履歴
- NFTやオンラインゲーム内資産の情報
サブスクリプションサービス
- Netflix、Spotify、Amazon Primeなどの契約情報
- 自動更新の停止手順
思い出や記録
家族や親しい人に引き継ぎたい情報。
写真やビデオ
- 家族写真や旅行の記録(クラウドや外付けHDDに保存)
- 子供や孫へのメッセージ動画
日記やエッセイ
- デジタル日記(Wordファイルやアプリ)
- 家族に伝えたい人生の教訓や思い出
家系図や家族の記録
- 家族の歴史を記録したファイル(PDFや専用ソフト)
- 伝統や風習の説明文書
社会的関係
遺族がスムーズに引き継ぎできるようにするための連絡先やネットワーク。
緊急連絡先
- 親族、友人、知人のリストと連絡先
コミュニティ情報
- 所属している団体や趣味のグループの情報
- ボランティア活動や会員権に関するデータ
仕事関係
- 職場の連絡先、取引先の情報
- 作業中のプロジェクトデータ
法律関連
法的手続きに必要なデータ。
遺言書
- デジタル化した遺言書(公証人の証明がある場合)
- 遺産分割に関する希望
契約書
- 購入契約やリース契約(車、家電など)
- 借用書や貸与契約書
弁護士や税理士の情報
- 信頼できる専門家の連絡先
デジタル終活のすすめかた
データの分類を行い不用なデータを削除する
スマホにあるいままでの写真や動画全てに目を通す作業はかなりの時間を有しますが、最後まで根気よくがんばります。やることは「いらないもの」を削除していきます。フォルダに溜まった写真や動画の一番最初に戻り、一から順番にひたすらいらないものを削除しましょう。
集中力がとぎれて大事な写真も消してしまっている場合があるので、全て消し終わった後は削除した項目を見直して、本当に不用なものだけか確認してから「全て削除」をしてください。
万が一大切なものを削除してもクラウド上に残っている可能性が高いので、お使いのスマホキャリアに連絡してみてください。
残したデータの中に家族にも見られたくないものがあれば、べつのフォルダに移してパスワードでロックをかけておくことをおすすめします。
エンディングノートに記載して残す
デジタルデータをエンディングノートに記載するときは、家の中を整理するようにすすめます。例えば、使用している端末のログインIDやパスワード、メールアカウントやクラウドストレージのログイン情報、さらにそれらのデータが保存されている具体的なフォルダ名や場所を明確にしておくことで、せっかく整理したのに見つけられないトラブルを防ぎます。また、二段階認証を設定している場合は、認証に必要なメールアドレスやアプリの情報も忘れずに書いてください。
データの取り扱い方についてもエンディングノートで明確にすることが望ましいです。例えば「クラウドに保存された写真や書類は家族で確認した後に削除してほしい」「特定のデータはUSBメモリに保存して大切に保管してほしい」などの希望を具体的に記載します。また、個人情報が含まれるデータについては、端末を初期化して処分してほしいなど、データの整理や削除方法についても具体的に指示しておくと遺族が迷わず対応できます。
ネット銀行や証券会社の情報など、財産に直接関わる情報については、より慎重に扱います。こうした情報をエンディングノートに直接記載することは避け、代わりにそれらの情報が保管されている場所や確認方法を書き残します。例えば、「銀行の口座情報や証券会社のログイン情報は金庫に保管しているメモを確認してください」といった形で記載し、エンディングノートから情報漏洩しないように注意することが重要です。
また、これらの財産情報については信頼できる家族や弁護士に引き継ぎする趣旨を記載し、必要に応じて専門家に相談できる体制を整えた方が安心です。
SNSアカウントについても、亡くなった後にそのまま放置されることが多いため、エンディングノートで適切な対応を指示しておきましょう。たとえば、アカウントの削除を希望する場合は、運営会社に削除を依頼してほしいと記載します。また、Facebookのように追悼アカウント化が可能な場合は、その設定を希望することも記録しておくとよいでしょう。SNSは死亡届などの必要書類を提出すれば遺族でも対応してくれる場合がほとんどです。
さらに、一部のSNSではアカウント管理を任せる代理人を設定する機能があるため、その設定についても事前に確認し準備しておくと安心です。
エンディングノートに記載した情報は適切に保管し定期的に更新することが重要です。パスワードやアカウントは頻繁に変更されるため、半年から1年に一度は見直す習慣をつけましょう。
紙のエンディングノートを使用している場合は、金庫や鍵付きの引き出しなど安全な場所に保管してください。デジタル形式で保存する場合は、暗号化されたUSBメモリや信頼性の高いクラウドストレージを利用するのが良いでしょう。これらの対応を行うことで、遺族や関係者がスムーズに手続きを進めることができ、混乱や負担を最小限に抑えることができます。
デジタルが促進する世の中に逆らうことはできません。新たな終活の形にとまどう方は多いかもしれませんが、少しずつ解決していけば人生の不安は解消されます。
家族の負担や心配を解消し、よりよい人生の最後に向けて終活を進めていきましょう。遺品整理・生前整理・特殊清掃・相続に関する相談は【あなたと遺品整理】とLINEともだちになってお悩みをメッセージしてください。
このようにリストにして確認すると、忘れていた項目がいくつも見つかったのではないでしょうか?デジタル終活のデータを把握したところで、次は膨大なデータの管理方法について説明します。